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琴引浜(京都):丹後で守られている歌う砂浜

カテゴリー見出地形地質

琴引浜景観画像

■概要
琴引浜は丹後半島の西部、日本海に面した全長1.8kmに渡る自然の砂浜で、人が歩くなどの刺激を受けると砂が「クィックィッ」という印象的な音を発する。
このような特徴的な音を発する砂を一般に「鳴き砂」と呼ぶ。海が汚れると鳴かなくなってしまうが、琴引浜では開発の影響が少なく、地元活動などにより鳴き砂の環境が維持されている。
特定のスポットでは、上からこぶしなどで叩くと太鼓のような反響音が返ってくる。その場所を太鼓浜と呼んでいる。
琴引浜は鳴き砂と景勝で古くから知られ、室町時代の武将で歌人の細川幽斉、与謝野晶子などの歌碑が建っている。

名称琴引浜の鳴き砂(通称):ことひきはま
丹後天橋立大江山国定公園(2007年8月に若狭湾国定公園から独立)
全国白砂青松百選
日本の渚百選
残したい日本の音風景百選
国指定天然記念物
国指定名勝
京都府景観資産
山陰海岸ジオパーク
所在地京都府京丹後市網野町掛津および遊
(旧町名は京都府竹野郡網野町)
交通機関           ・JR豊岡駅・福知山駅・西舞鶴駅→北近畿タンゴ鉄道(略称KTR)網野駅下車→丹後海陸交通バス15分「琴引浜」下車(本数少ない)→浜まで徒歩1km
・大阪神戸から直行バス「ブルーライナー」あり
[網野町HP交通案内]
http://www.amino-info.gr.jp/access/index.html
マイカー・京都縦貫自動車道・宮津天橋立ICから30km、40分
・豊岡市中心部から35km、50分
・駐車場あり(有料)
その他の基点・鳥取市中心部から100km、2時間
・舞鶴市中心部から50km、1時間10分
見学詳細・浜は入場自由。ただし駐車場有料500円、原則的に砂浜のスタッフ簡易解説付き
・浜は1.8kmあり、全体が鳴き砂。太鼓のように響くのは細川幽斉歌碑付近の特定スポットに限られる。
・訪問時の注意として、良い音を発するには同じ場所でも条件が必要で、いつ行ってもよく聞こえるとは限らない。
付帯施設「琴引浜鳴き砂文化館」
開館時間9:00-17:00、入場16:30まで
火曜・年末年始休館、夏休み期間は無休
入館料300円、駐車場無料、浜の駐車場支払い証で入館無料。
・文化館から琴引浜まで1km
問合わせ「琴引浜鳴き砂文化館」
0772-72-5511
http://www.nakisuna.jp/
京丹後市観光協会網野町支部
0772-72-0900
http://www.amino-info.gr.jp/kankou/index.html

■地名読み方
京丹後:きょうたんご 掛津:かけづ 遊:あそび


琴引浜地形図


■ガイダンス施設「琴引浜鳴き砂文化館」
鳴き砂文化館正面
内陸側に少し離れて、2002年にオープンした展示・体験施設。網野町が建設し、財団法人ナショナルトラスト・ヘリテイジセンターが運営している。
入館者にはスタッフが見本の砂で実演しながら、鳴き砂のしくみを説明してくれる。また展示では容器に盛った砂で音を疑似体験できたり、鳴き砂の科学的な説明から全国の分布、世界の鳴き砂、保全のために取り組んでいる活動なども細かく解説している。
浜で楽しんだ日も、鳴らなくて不満の残った日も、ここに寄ってみるとよい。

鳴き砂文化館展示ドレミ音階 鳴き砂でドレミの音階を奏でる(?)

鳴き砂文化館展示カエルの揺りかご 鳴き砂と水を入れた容器。揺らすと水中の砂が鳴る

◆鳴き砂の科学1;どうして鳴るのか? 
展示解説プラス、冊子『鳴き砂の不思議』に加えて、館長さんから教わったことを集約すると次の通りである。

どこの砂浜を歩いても「ザクッザクッ」と音がするのは当たり前である。鳴き砂の音はこれとまったく違い、「保ち堪えられず急に動き始めた粒の摩擦音」として、「クイックイッ」「ブッブッ」「キュッキュッ」など、人それぞれの擬声語に表現される音で、不思議と耳に心地よい響きである。
鳴き砂文化館でのサンプル音(mp3ファイル)

この音が出るには、砂粒の表面摩擦が大きいことが必要である。摩擦の踏ん張りが限度を超えて急に動き出す時に、多くの粒が振動して音を発するのである。
表面に微細な水分や埃が付いていると潤滑剤の作用をしてしまい、摩擦が小さくなる。そのために降雨中や降雨の後も細かな汚れが付くので、鳴らなくなる。

実は全国の多くの海岸で以前には同じように鳴き砂があったのだという。それが消えていったのは目に見えない汚れが増えたことによる。
「鳴き砂ネットワーク」に登録されている場所(下記参照)は大都会付近にはなく、その中でも良好な場所はさらに人口の少ない地域になる。

この砂浜の砂は大部分が石英の粒である。石英が主体の砂浜は珍しいものではなく、これが半透明のため全体に白く見えることから「白砂青松」或いは「真砂(まさ、まさご)」という呼び方が各地の景勝地で使われ、それなりに砂が鳴いていた。

石英はもともと花崗岩を構成する粒子で、花崗岩が露出してボロボロに風化することで小さな粒になり、川が運んでくる。花崗岩の中で石英粒子は重く、他の軽い粒子は遠方に流れてしまうために石英が残りやすい。
 鳴き砂顕微鏡写真
その石英粒子が集まって砂浜を形成したのは、地形に沿った沿岸流で運ばれた粒が、波によって陸に打ち上げられた結果である。砂は静かな水中では沈んでしまうが、海が荒れたときには波に持ち上げられる。その時大き過ぎる粒は持ち上がらず、一定以下の粒が選別される

砂浜になった砂はやがて波にさらわれて海に戻り、また打ち上げられることを繰り返している。実はこれが鳴き砂を維持する大切な「クリーニング作用」で、海水に洗われることで汚れを落とし、摩擦力を回復しているのである。

そのクリーニングは主に冬に行われる。日本海を渡る季節風が荒波を巻き上げるためで、そのため冬から春にかけてはよく音が鳴るという。これも日本海側が鳴き砂に有利な条件のようだ。

他の条件として砂を供給する河川が大きすぎても急流であっても、汚れを一緒に運んできてしまうため不利になる。丹後半島は高い山がなく、流域面積(一つの川に降水の集まる面積)も広すぎず、花崗岩質の地質という好条件にある。

そしてもちろん人為面の影響が少ないことも必要である。土地開発があれば土が混ざってくるし、住民が増えすぎても汚濁が進む。近代以後、国内で鳴き砂が減った一番の理由はこれであり、すぐ西の八丁浜や80km西の鳥取砂丘が鳴らない理由も同じだろうという。

◆鳴き砂の科学2;太鼓浜はなぜ響くのか?
琴引浜太鼓浜 太鼓浜を鳴らしているガイドさん

ドンドンと、太鼓を叩くがごとき反響音の返ってくる場所がある。
この音は鳴き砂の「クィックィッ」という音とはかなり違う。
その場を掘るなどの調査をしたことはないということで、音が響く正確な理由は解っていないが、砂の下に平たい岩盤があり、震動が共鳴しているのではないかという説明がなされている。
私は以下のように推定している。(図)
太鼓浜空洞の図
・砂の下に、薄く平たい岩盤が層をなしている
・一番上の板と二番目の板の間に空洞がある
・その空洞が太鼓の胴のように音を反響させる

太鼓浜の岩盤 太鼓浜の岩礁
写真のように、現場の海面際には平たい岩礁がのぞいている。この下には同じように板状の岩が重なっているのではないか。実際、周囲の岩にはこのような板状の節理の入ったものが見られる。反響音があるからには空洞があると考えたい。
空洞内部は砂で完全に充填されず、幾らかの海水で満ちた空間が残っているのだろう。

◆鳴き砂の科学付録;石英結晶の形状について

石英の結晶は通常「水晶」として知られるように、六角柱が基本形である。説明によれば琴引浜の砂には通常の石英とは異なる、丸みを帯びた粒が多く含まれるという。この丸い粒を特に「高温石英」と呼ぶ。
鳴き砂文化館展示高温石英
冊子によれば「地球のマグマが冷却するとき最初に結晶化するのが高温石英」「高温で液体状態のマグマの中に浮いて結晶化した珍しいもの」だという。別の専門書によれば地中の高温マグマにはよく生じ、冷却する過程で結晶構造が変化し普通の石英になってしまうため発見が難しいということらしい。「地球誕生の時代に生成された」とは考えないほうがよさそう。
この高温石英は地質的に珍しいものとして文化館の展示で紹介されているが、鳴き砂の必要条件ということではないようだ。


◇地元の保全活動と漂着ゴミ

ここ琴引浜では地元民が清掃活動を行っている。日本海側では漂着物が多くゴミ拾いも大変だが、目に見えない汚れがあっても砂は鳴かなくなるので、周辺の広範囲に渡る環境保全も必要であろう。

日本の海岸を歩いてみると遠目に綺麗と思えても実際にはビニルや、缶、ボトル、釣り道具など、拾いきれないほどゴミが砂に混じっているものである。絶えず清掃していないとゴミのない海岸は実現できないというのは残念なことだ。

鳴き砂文化館ではそういった活動ぶりと、拾われた粗大ゴミの一部も展示している。そして大きなゴミの大部分は、隣国の文字が書かれた物であるという。この日本海側全体の迷惑は国際問題になって久しいが、一向に改善される様子がない。

その一方で、平成19年(2007年)には海の漂着でなく、空から飛来した大きな懸垂幕が琴引浜の林で発見されるという出来事があり、韓国の都市と交流を始めるきっかけになった。この懸垂幕も文化館で展示されている。
鳴き砂文化館展示の懸垂幕 朝鮮半島から飛来した懸垂幕など


◇国内各地の鳴き砂

平成20年現在、「全国鳴き砂ネットワーク」に加盟しているのは18市町村、17個所の浜、未加盟の場所を加えると30個所以上が鳴き砂として知られている。ただし、その中でも今は鳴かなくなった個所や、知られていない所もあるらしい。
全国鳴き砂分布図  全国の鳴き砂分布図(クリックで拡大)

それらの中でベスト3として文化館のスタッフが挙げたのは、ここ丹後の琴引浜と島根の琴ヶ浜、宮城の十八鳴浜(くぐなりはま)である。宮城の十八鳴浜は2011年の震災で津波を被ったが、すぐに回復したらしい。

筆者は島根の琴ヶ浜も2012年、訪問してみた。ここには「仁摩サンドミュージアム」という立派な博物館が建てられ、最近では映画の舞台にもなった。
島根琴ヶ浜 島根県大田市仁摩町の琴ヶ浜


◇付記

琴引浜は「山陰海岸ジオパーク」に含まれている。しかしこの「地質地形探訪記」で取り上げるにはややそぐわない面もある。それは音を出す砂浜というものは先述のように本来各地に存在したからで、背後の丹後半島に広がる花崗岩の山地も付近の海岸地形も国内各地によくあるものである。

ポイントは各地で失われていった環境がここでは維持されて、希少価値を持つようになったことだろう。その意味では文化的遺産の性格が強い。とはいえ地元の人々にとって砂浜が音を出すことは当たり前で、意識することは少なかったという。

物事の価値は少し離れた立場から見て、あるいは失ってから気付くことが多い。筆者は琴引浜を訪れて初めて、かつて日本中に鳴き砂の浜があったことを知った。それらは気付かぬうちに消え去り、鳴かない浜を当然と思い続けていた。
完全に鳴かなくなった砂浜を昔の姿に戻すことは無理だろう。せめて残っている鳴き砂を大切に保全し、次世代に伝えていきたいものだ。

浜で案内してくれるガイド氏、文化館のスタッフなど地元の資産を誇りにし広報活動を仕事とする人々は情熱的だ。館長さんは私の訪問時にたまたまほかの来客がなかったらしくて、たっぷり30分以上マンツーマンで教授して頂いた。感謝申し上げます。

■最新訪問時期:2012年11月

■参考図書:
『鳴き砂の不思議』全国鳴砂ネットワーク

『新版地学教育講座3 鉱物の科学』地学団体研究会 東海大学出版会 1995年







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